ぺぺロムだからもう会えない

みんなそれぞれの人生を歩み、僕と同じように地元を離れたやつもたくさんいます。

そんな仲間の一人と去年、数ヶ月ぶりに電話をしました。

今回はその時のお話。

そっかそっか、でも相変わらず元気そうで良かったよー

「お互いね〜…あ、ごめん、家の電話が鳴ってる」

ほんと?じゃあ切るわ

「いいよいいよ、たぶんすぐ終わるから…あ、たっくんたっくん、ちょっとおいで。あまごさんとモシモシしよっか」

・・・

電話の相手は地元の友達。

二十台半ばで結婚して約10年で離婚。

その後、しばらくして今の旦那さんと再婚。

相手の連れ子と、再婚後に生まれた「たっくん」との四人家族。

たっくんは、5歳になったばかりの男の子だ。

物怖じしない、人見知りしない、めちゃくちゃかわいいワンパク坊主。

そして旦那さんの連れ子である16〜17歳になるおねえちゃんのことが超大好き。

たっくんとは10歳以上離れているが、とっても仲の良い姉弟だった。

・・・

おー!もしもし?たっくん?

「もしもし」

ひさしぶりだね!げんき?

「げんきだよ」

いまはなにしてたの?

「トミカしとっと」

いいね~きょうはおねえちゃんも一緒にいるの?

「おねえちゃんはね、ペペろむ


…ぺ、ぺぺろむ?


ぺ、ぺぺろむってなあに?

「…しらない」

突然、その声は今にも泣きそうものに変わり、驚いた。

「だから…あえない…」

ええ?!

・・・

急に話す声が変わる

「あ、もしもし?ごめんねーなんか荷物がすぐ届くみたいだからまた今度ね」

ツー ツー

電話は一方的に切られた。

ぺぺろむってなんだ

ぺぺろむって何だ…?

おねえちゃん、まさか病気なのか?

「ペペロム」なんて聞いたことない病名だ。

それで今は入院しているの?「だからあえない」の?

たっくんの気持ちを思ったら、なんだかこちらまで悲しくなってきた。

それからほどなく、スマホの検索履歴はペペロムで埋まった。

ペペロム 病気
ペペロム 症状
ペペロム 食べられる物
ペペロム、ペペロム、ぺぺロム…


気づけばあっという間に夜。

結局、何にもわからなかった。

だけどなんでもいいから、力になりたい。

そしてスマホの発信履歴を開く。


「もしもしー?」

1日に2回も電話してごめん。

「いいよ今日休みだったし。どうしたの?」

あの、もしかしたら話したくないかもしれないんだけど。

「うん?うん、どうぞ」

ぺ、ペペロムって何…?

「え?何?」

ペペロムだよ。さっき、たっくんが言ってたんだ。

「…。」



その時。

電話のむこうで声がした。

ナナナナナナナ♩

ナ〜ナナナナナナ♩

ひとつはたっくんの声。

もうひとつは…おねえちゃん?

めちゃくちゃ陽気に歌っている。



あれ?後ろにおねえちゃんいるの?

「うん、いるよ。さっき帰ってきた」

だって、たっくんがぺぺロムだから会えないって泣いてたから…

「は?」

「……ブフッ!」

「何が言いたいかやっとわかったわ」

「おねえちゃん、今日ペイペイドームにSnowManのライブ観に行ってたのよ」

「おねえちゃんが、たっくんは一緒に行けないの、ごめんね、って言ったらあの子大泣きしちゃって」

「おねえちゃんどこいったの?とおいの?もうあえない?ってホントうるさかったんだから」

「つかアンタ、もしかしたら話したくないかもだけど…とか超ウケるんですけど!」




たっくん…?( ◉ω◉ )

こりゃおじさん、一本取られちゃったぞ⭐︎