こんばんは。
今日は昔のバイト先での話。
よく観光地でバイトした
僕は学生時代、観光地ばかりを選んで働いていた。
その理由はふたつ。
1.時給がちょっとだけ良い
2.お客さんが基本、浮かれている( ̄∀ ̄)
観光地に来るお客さんというのは、基本的に「ワクワク状態」なのだ。
だから、あとはワッショイワッショイすればよし!
こちらもニコニコしていれば大抵のことは上手くいく。
よーするにチョロいのである(笑)
東京湾アクアラインのSA「うみほたる」
東京湾を横断する道路アクアライン。
ここの真ん中あたりに位置する海上のサービスエリアが「うみほたる」だ。
そして、僕の大学生の頃のバイト先だった場所でもある。
ここは通勤方法がちょっと変わっていて、
木更津のとある場所が集合地点となっており、そこまで自力で行けば、あとは従業員用の乗り合いバスが無料で乗せてくれた。
このバスに揺られること15分。
朝日に光る東京湾を眺めながら到着を待つ。
(まあほとんど寝てたけど)
いいなぁ、このままどっか行きたいなぁ。
いつもそんなことを思いつつ、隣のおばちゃん達からのマシンガントークに相槌を打った。
ちなみに「M沢さん」が隣に当たってしまったらハズレの日。
ツバがたくさん飛んできて、着くころには自分の顔がくっさくなっていた。
気さくな人だったけど、おばちゃんたちの派閥間争いに負けて辞めてしまったんだよな。
最後の日は苦虫を噛み潰したような顔してたな。
今でも思い出せる人は意外と多いのだ。
・・・
一方、お客さんはといえば、
千葉方面に行く人も、神奈川方面に行く人も、皆がちょっとテンションお高めだ。
そしてお客さんとは面白いもので、見ているとなんとなく「関係性」が見えてくる。
仲の良さそうな家族、ひと悶着あったっぽい夫婦、絶対にワケありなカップル。
ちなみに一度だけ、芸能人の「え?マジ?」なペアを見たことがある。
そーいや、あの後やっぱり離婚してたっけ笑
印象深い思い出
「うみほたる」はサービスエリアだ。
つまりは仕事で立ち寄る人もたくさんいる。
そして自分は主に、週末を中心にシフトを組んでもらっていた。
だから「毎週土曜のこの時間に来るお客さん」といった人もチラホラ目にした。
その中にアニマル浜口ならぬ「アニマルがまぐちさん」がいた。
おそらく歳は50代くらい。
ひげを生やし、頭は短めの坊主で、体格はがっしり。
冬場でも腕まくりをしていて、その右手はいつも真っ黒だった。
きっと長距離トラックのドライバーとか、そんな仕事をしているのだろう。
その男性ホルモン全開な人は、土曜の朝に決まって訪れた。
買うものは缶コーヒーと肉まんと、
なんとなんとチョコベビー(笑)
あたたかいものとチョコを一緒に入れると溶けてしまうので「袋分けますね」と言ったら「いいよ、すぐ食っちゃうから」と返ってきた。
そして「〇〇〇円です」と金額を告げると、
超絶不似合いな、可愛らしいウサギさんがプリントされた「がまぐち」を取り出した。
中からは1000円札が一枚出てきて、それが毎回のお決まりだったため、いつしかお釣りの金額まで覚えてしまった。
チョコベビー売り切れ
ある週末。
アニマルさんはいつも通りやってきた。
買うものが決まっているアニマルさんは、いつも入店から出店までおおよそ90秒!
それがこの日はいつまで経ってもレジにやってこなかった。
どうしたんだろう。
気になって様子を覗き込むと…。
(…あ)
な、なんとチョコベビーが売り切れているッッ!!
これはまずい。
アニマルさんをがっかりさせてしまう。
そしてどうやらアニマルさんは迷っていたのだ。
隣の「不二家ルックチョコレート」で我慢するかどうかを(笑)
思わず声が出た。
「アニマ……じゃなくてお客さん」
「…?」
「バックヤードにあるから今出してきますよ。ちょっと待っててください」
「!…お、おお」
ルックを棚に戻すアニマルさんを尻目に、ダッシュで取りに行く。
そのままレジに入ると、アニマルさんは「サンキューな」と笑ってくれた。
これが美人な女の子だったらきっと胸キュン確実だっただろうけど、まあこれはこれで嬉しかったのを今でも覚えている。
あのがまぐちは娘さんのモノだった
「チョコベビー、うまいっすよね」
ある日、こう話しかけたことがある。
「うん。でも神奈川に着くまでに無くなっちまうんだよ」
たぶん、バイトしていた数年間で、アニマルさんとちゃんと話したのはこの時くらいだった。
そんなアニマルさんがある日のこと。
なんと娘さんとおぼしき女の子と手をつないでやってきたのだ。
(そんな…ひどいよ…。
アニマルさん…結婚してたなんて...!)
いやいや、僕そういうんじゃないですから。
でもかなりびっくりしたのは本当だ。
(なんせ絶対独身だと思ってたから笑)
そしていつもの品物をレジに置くと
「ゆきがおかねだすの」と娘さん。
「どうもありがとう。今日はお父さんと一緒で嬉しいね」
「うん、お父さん。いつもゆきのおさいふをもってお仕事に行くんだよ」
「おいおい、持って行けってゆきが言ったからだろ(笑)」
そうか。
そういうことだったんだ。
長年の謎が解けた気分だった。
はじめはあの財布を見て「うわ…なんだこのオヤジ」って思ってたけど、一気にアニマルさんが優しい素敵なパパに見えた。
(本当に娘さんが可愛いんだろうなぁ…)
あの日のアニマルさんのデレデレ顔を、今でもはっきりと思い出せる。
あれから16年
僕は今でも千葉に帰る時はアクアラインを使う。
車を停めて、お店があった階へ続くエスカレーターに乗るたびに、不意にアニマルさんのことを思い出すことがある。
ゆきちゃんはあの頃、きっと小学校1年生くらいに見えたから、今はもう成人してるのかな。
今もし、このエスカレーターの反対側をあの二人が通過しても分からないんだろうなぁ、なんて。
・・・
僕はこのエスカレーターに乗る時、自分の娘を抱っこする。
娘は本当はお母さんに抱かれてる方が良いみたいだけど、僕が抱っこをしたいので親父の権限で強制的に付き合ってもらう(笑)
(どうだ、うちの子かわいいだろう♪)
本当にバカだと思うけど、これが本音の本音なのだ。
お父ちゃんは親バカ。
これは世の中の普遍の真理なのである。