こんばんは~。
今日は携帯電話からの更新なので、久しぶりの「文字だけ日記」です。
僕がこの飛騨に来て最初に住んだ集落。
そこでの出来事です。
玄関の向こうの話①
飛騨に来て、そしてあまごを飼い始めて、最初の冬。
人口100人ほどの小さな集落。
隣の家までは歩いて5分くらいかかります。
窓の向こうは大雪。
音もなく降り続いていました。
この年は昭和56年(僕の生まれた年)以来の大雪だったそうで、
「音もなく」というよりは、あまりにたくさんの雪が降っていて、
近くを流れる川の音も、時々通る車の音も、
すべてが吸い込まれて消えてしまうようでした。
そんなある時。
どこか遠くで
キャーッ
という声がしました。
はじめは、気のせいかなと思いました。
でもそのあと、もう一度。
キャーッ!
と、確かに聞こえたのでした。
(な、なななな、何なんだ…!!!)
・・・
誰もが息をひそめる冬の雪山の夜です。
外から声がするだけでも怖いのに…。
あまごも耳を立て、窓の向こうの闇に目を向けます。
おそるおそる窓を開けて、あたりを見回しました。
でも、誰もいない。
何も聞こえない。
(こえ~よ~…)
「あまご、こっちおいで」
まだ生後4ヶ月のあまごを布団に入れると、頭から布団をかぶって寝ました。
翌朝。
近所のおじいさんにその話をしたら。
「おめーそりゃ鹿の鳴き声やさ」
だって!
それ以来、遊びに来た友人がビクッとするたびに
「ははは!あれは鹿の鳴き声っしょ!そんなことも知らんの?」
と、ドヤ顔をする僕なのでした。
玄関の向こうの話②
同じく、その集落での話です。
友人が泊まりに来ていたある日。
朝8時。
友人は朝の散歩をしようと寝巻のまま外に出ました。
すると、すぐに戻ってきて
「外におさるがいる…」
サル?
「サルなんてしょっちゅういるよ。あまごが追いかけて行っちゃうから玄関閉めて」
「そうじゃなくて、おさるだよ。「アニマル梯団」の!」
「え!なんで!」
「番組のロケだって」
なんでも、当時放送していた「田舎に泊まろう」という番組のロケだったそうです。
サルはしょっちゅう見ましたが、まさか「おさる」さんを見るとは思いませんでした。
僕の住んでいた家は、高山市が独身者向け(移住者向け)に用意した市営住宅でした。
でも番組的には「昔からそこに住んでいる人の、古〜い家に泊まる」というものだったみたいです。
まーその方が絵になりますもんね~。
玄関の向こうの話③
僕はこの集落で数年を過ごした後、もう少しだけ町に近い地域に移ることになります。
その理由として、山小屋で働く為に道の駅での仕事を辞めたこと。
そして、下山後には結婚を考えていたので、
小学校も幼稚園も無くなってしまった集落でやっていけるのか。
スーパーも働くところもない、人口もどんどん減っていて、
町から30kmも離れたこの山奥で。
そんなことを考え、新しい職場に近い地域に引っ越したのでした。
・・・
僕は、この集落を離れる時に、お世話になった人たちに挨拶周りをしました。
どの人もとても残念がってくれて、
あまごのことも「最後だからいっぱい撫でさせて」と言ってくれて、
お年寄りなんかは「また遊びにおいで」といっぱい涙を溜めて、送り出してくれました。
僕は、あの集落に何も恩返しが出来なかったなぁ。
今でも遊びに行けばたくさん話をするし、
親しかった人の仏壇にお線香もあげるし、
神社の前に腰かけていると、離れてしまったことを申し訳なく思ったりします。
この地域の秋祭りは独特で、昼間に獅子が町内を回り、
夜になると、集落の皆で神社の境内で酒盛りをします。
早く集落に馴染みたかった僕は、祭りのお囃子のメンバーに混ぜてもらって、
下手くそなりに太鼓の役目をもらったりして、酒盛りでもベロベロに酔っぱらいました。
きっと、あの集落の内の数人くらいは
「ずっと居ついてくれるもの」と思ってくれていたのではないだろうか。
本当にごめんなさい。
でもおれに出来ることは、これから先も協力していくからね。
言い訳みたいだけど、簡単に捨ててしまったわけではないんです。
結局、言い訳なんだけど。
玄関の向こうにはいつも新しいものが待っています。
新しいものに触れるのはとても大切なこと。
でも「それまで触れてきたもの」も大切にしていこうと思います。
おわり!