大昔に見た夢の話をします。
たぶんもう25年くらい前の夢です。
小学校の低学年くらいの頃の夢。
でもなぜか今でもはっきり覚えています。
当時、まだ元気だったババに話したら「それは良い夢だから大切にしろ」と言われた夢です。
ちょっとスカして書いてますが(笑)なるべく脚色はしていないつもりです。
でも鼻についたらすいませんm(_ _)m
・・・
日の差さない森の中を歩いていた。
暑くも寒くもなかった。
セイタカアワダチソウが固くなっていたし、季節は秋なんだと思う。
そんな雑草が生い茂って、今にも轍を見失いそうな道の先に、湖…と呼ぶには少し小さい、池のようなものがあった。
森を抜けると、それまでの鬱蒼とした世界が嘘のように視界が拓け、空からは穏やかな日差し。
轍は森を過ぎても続き、つきあたりの湖をぐるりと迂回するように右側へと続いていた。
少しだけ傾き始めた日差しは、水面に落ちてキラキラと光っている。
どうやら水の底は浅いようで、ヨシノボリのような魚が岩陰で尾ひれを揺らしていた。
道は、視界の先の、湖のほとりに立つ一本の立派なハルニレの木の下で終わっているようだった。
そこには子供が一人、こちらを見て立っている。
あたりには他に誰も見当たらない。
そういえば、ここはこんなにも山深いのに鳥の声一つしない。
聞こえるものといえば、時折吹いてくる気持ちのいい風の音くらいのものだ。
それが水面を波立たせ、雑草を揺らし、子供の髪をそよがせている。
子供の姿が見えてからしばらく歩き続け、
ようやく対面した。
こんにちは。
「こんにちは」
ここで何をしているの?
「もうすぐ日が暮れるから、あいさつをしに来たんだよ」
あいさつ?誰に?
「きみにだよ」
あいさつをしたら…どこかに行くの?
「そうだよ、おかあさんのところに帰るの」
君のお母さんはどこにいるの?
「そこ」
子供は湖を指差す。
お母さん、水の中に住んでいるの?
「ちがうよ、ぜんぶおかあさんだもの」
・・・??
そう話すと子供は笑った。
・・・
この道、ここで終わっているんだけど、どこか他に道はあるかな?
「ここにいれば道ができるよ。ぼくのかわりにここにいればいいよ」
そうもいかないよ。明日は学校もあるし。
(当時は小学生でしたので)
「がっこう、ぼくもいってみたかったな」
そう?めんどくさいだけだよ。家から1時間も歩かないといけないし…。
(うちは学区内で一番遠い家でした)
「でも、みんなでおしゃべりしながら行くんでしょ?」
うん、あとはドングリを蹴ったり、遊んだりしながらね
「たのしそうだね」
近所なら一緒に行く?
「そうできたらいいんだけどね」
家、遠いの?
「家はすぐそこだけど、ぼくはもうおかあさんのところに帰るから」
「帰ったら、ぐっすり眠るんだ。ほんとうは眠くないんだけどね。たくさん眠ってまた次の支度をするんだよ」
「支度がすんだら、みんなとおしゃべりしながら学校に行くよ」
「みんなと遊びたいし、大好きって頭をなでてもらいたいから」
「だから、たくさんしあわせになってね」
「おかあさんにも、うんとやさしくしてね」
その子の、男の子のような女の子のような不思議な声を聞いていると、
なんだか頭がボーっとして、次第に意識が遠くなっていった。
気が付くと、あたりはすっかり夕焼け空だった。
そこに子供の姿はなく、代わりに足元の道の先には、明かりの灯った見覚えのある家が建っていて、
あわてて走って、引き戸をガラガラと開けたところで夢から覚めた。
・・・
目を開くと、いつも一緒に寝ていた祖母と祖父が心配そうにこちらを見つめていました。
祖母なんて半分泣きそうな顔で「うわ言のようにバイバイなんて言うから死んでしまうのかと思った」だって(笑)
たぶん、なんですけど、あの子供は僕が生まれる前に母の中で亡くなった水子だったんじゃないかと思います。
(大昔に家族みんなで千葉の南の方のどこかに行き、そこで水子供養の何かをしたことがあって、
当時の僕は「水子」というものが理解できなかったのですが、なんだかとても悲しい気持ちになったことだけ覚えています。)
ただ、今になって、あの子の言っていたことを思い返してみると、
あの子は、ひとつの命として、形ある姿でこの世に生まれてくることは出来ませんでしたが、
おそらく、「ぐっすり眠ったあと」に僕になったんじゃないかと思うのです。
すでに生まれ、もう小学生になっていた僕の夢に出てくる理由は分かりませんけどね。
そう思って、あの子の言っていたことを思い返すとちょっとグッとくるものがあります。
子供の頃には不思議なことって起こるものですね。